ゴー宣DOJO

BLOGブログ
高森明勅
2014.7.9 14:27

ストリップ断想(打ち止め)

笹幸恵さんの新鮮なストリップ鑑賞記に触発されて、
ショーを観たこともない私が、何で3本もブログを書く必要が
あるのか。

自分でも合点がいかない。  

しかしこの際だから、ストリップを巡って
おぼろげに思い出すことどもを、
総ざらいしよう
(何が“この際”なのか分からないが)。

その三。

今度は、大学の学部生から大学院生にかけての頃。

今、気付いたが、どうもわが青春の高校生〜大学院生にかけて、
何故か、常にまだ見ぬ“ストリップ”が付きまとっていたようだ。

でも今回は、ストリップ劇場に繰り返し足を運んだ話、なのだ。

ストリップショーをこれまで1度も観たことがないのに、
劇場には何回も通った。

とは、これいかに。

実は亡父を生前、慕っていた人の中に、
ストリップ劇場の経営者がおられた。

ご自分で右翼団体を作っていて、とてつもなくデカくてイカツい、
全面黒塗りの街宣車を持っていた。

その人が、私のことも目にかけて下さっていた。

そんな事情から、父からの言託けその他の用事で、
大学の夏休みの帰省中とかに、
その人に会いに行くことがあったのだ。

しかし、何しろ田舎で、しかも私もまだ二十歳前後の頃だから、
人の目が気になって仕方がなかった。

その劇場は、市街地から少し離れた、周りに何もない道路沿いに、
ドーンと建っていた。

まぁあるのは、ド派手なパチンコ屋ぐらいだったはず。

だから、お邪魔する時は、他人に見られていないか、
しきりに周囲を窺いながら入った。

今から思うと、それがまた一層、
誤解される振舞いだったような
気がする。

その人と会うのがどんな部屋だったか、よく覚えていない。

至誠通天(至誠、天ニ通ズ)」とか書かれた書が架かっていて、
鷲の剥製などが飾ってある「普通の」右翼の事務所ような感じ
と言っても、右翼の事務所自体よく知らないが)だった気もするし、
そうではなく平凡なオフィスだったような気もする。

事務のオバさんがお茶とか出してくれるんだが、
本当に普通のオバさん。

幸か不幸か、ストリッパーのお姉さん方にはついぞ
会う機会がなかった。

その人は優しげな印象で、私と会った時はいつも、
天下国家を憂えていた。

でも「今時の若者の性道徳の乱れは一体、どうなっているのか!
本当に嘆かわしい」とか言われると、
今時の若者」の1人で、ストリップ劇場の事務所に
ちょこんと座っている身としては、
返事の仕方が分からなかった。

で、帰り際に「遠慮しないで観て行ってよ〜」とか言われて、
ますます困った。

私が古事記をテーマに卒業論文を書き上げ、
大学院で研究を続けるようになると、その人が相談に乗っている
別の右翼団体の若者たちに、
古事記を教えてやって欲しい、
と依頼された。

若者たちと言っても私とほぼ同世代。

どう見ても、一癖も二癖もありそうなメンバーだ。

でも、古事記を勉強するのは良いこと。

そこで、まだまだ人様に「教える」なんて出来ないが、
一緒に勉強すれば良いと思って、
引き受けた。

ある夏休み、角川文庫をテキストに使って、何度か勉強会を開いた。

次の冬休みにも続きをやる…予定だった。

ところが、それっきり中止に。

何と、その右翼団体のメンバーのほとんどが逮捕されたんだとか。

その時の、依頼した人のバツの悪そうな表情を思い出す。

(完)

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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